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わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その12。。。
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その11。。。

以下、ファンメッセージに「パンドラの箱。。。」として昨晩投稿したものに該当する。

イシグロ氏の原著では、ヒューマニズムの成長と根底を炙り出すためだけに、生殖機能を奪われたクローンが自らの臓器を提供しつつ解体され、提供開始前のクローンにて介護されるという設定がなされたが、成長する子供たちに合わせ、読者の視線に対し注意深く、頃合いを見計らいながら、適度に明かされる仕組みとしていた。
しかしながら、テレビドラマは、途中から受動的に見てしまうことも多い。
そう、パンドラの箱が開けられる瞬間である。
時折、ネットで目にする「おぞましいものを見てしまった」系の拒絶反応は、まさに、イシグロ氏が伝えたかった「大切な過程」を完全にすっ飛ばし、「恐怖」というパックリと開いた赤い口に引きずり込まれてしまうからだろう。
パンドラの箱に最後に残る「希望」を見つけ出すには、あらゆる禍を、箱から叩きださねばならないのだろうが、このドラマを見て、臓器移植やクローンや医療や警備の本質を見誤って恐怖する人は確実に増えるだろう。
少なくとも、自分たちの知らない部分に恐怖する人々が正しく深く考えることのできるよう、ホームページから正しい情報へのリンクを張り巡らせるべきだろう。


今回のようなドラマ固有の問題は、「明日、ママがいない」等のドラマにおいても見受けられる問題ともいえる。
境界概念。。。幅の変動。。。その1.。。。

「パンドラの箱」を中途半端に開けたら、「希望」すら見出すことができない。
東日本大震災での被曝問題もそうである。

臓器移植やクローンの問題については、正しい知識を持つべきだろう。そういった知識や問題意識なしには、見るべきドラマではないのかもしれない。

大阪大学文学研究科/文化形態論専攻/臨床哲学および文学部/倫理学
浜渦辰二(はまうず・しんじ)氏のサイト内リンク集は、広く深く、よくまとまっている。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~cpshama/hamauzu.html

「クローン人間」リンク集
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~cpshama/link/clone-links.htm
「脳死・臓器移植」リンク集
http://www.let.osaka-u.ac.jp/~cpshama/link/noshi.htm

2016.03.06 09:10 追記
上記のリンク集は少し古いため、リンク切れも散見される。随時、追加予定。
あと、関連する書籍リスト

中島みち 「尊厳死」に尊厳はあるか
岩波新書、2007.9.20

いのちの選択
岩波ブックレット No.782、2010.5.7

福岡伸一 生物と無生物のあいだ
講談社現代新書、2007.5.20


2016.03.13 04:00 追記
夢の再生医療を実現する iPS細胞・第2版
別冊Newton. 2012.10.15

クローン・臓器移植に関する情報は、現代社会のネット上にて比較的良質なものを入手しやすくなっている。
イシグロ氏が当初、原書を記述した時点から比べると、法整備も進んできている。

ただし、「人クローンを作らない」という制約レベルである。制約を守らない組織にて生み出されてしまった場合に対処しうる法律は、現状ない。

しかしながら、受精卵ないし胚レベルでの操作の後、子宮にて育てなければ、生まれてくることはない。
操作の段階以降は、母体との間で相互に育まれ・出産という自然な現象を経て生命体として生まれてくる。

元になる細胞や核、遺伝子をどこから取ってくるのかによって、様々な制約が課せられる。
ESなのかiPSなのか。。。受精卵なのか体細胞なのか。。。
体細胞ヒトクローン胚までは成功している(2001.11.24、シベリ博士ら)が、肺の分裂は6細胞までで止まってしまったとある。体細胞ヒトクローン胚ES細胞を作成したという報告はないとのこと。
また、細胞内の遺伝子レベルでの若返りがなければ、体細胞からであれば、テロメアによって寿命が短くなっている可能性がある。


2016.03.29 02:30 途中文が途切れていたところがあり、ここに移動し追記しました。
キリスト教を含め、一神教圏では、過去からの人種差別の根源に、(神を)信じている自ら達が、理解不可能な人種や民族や生命体を、(自ら達が)信じている神が認めない限り(あるいは聖典に記述されていない限り)認めないという風潮があった、いや、あるようだ。それゆえ、自然な有性生殖に基づかない、無性生殖そのものであるクローンにて生まれて(産まれて)くる生命体には(神に認められた)魂が入っているかどうかという判断を先送りし続けざるを得ない。イシグロ氏が原作で描いたラストは、まさに問題の根底を「先送り」しつつ、生きていかざるを得ない、境界(教会)外部の生命体の宿命を如実に物語っている。

by kisugi_jinen | 2016-03-06 07:09 | つれづれ。。。 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from 来生自然の。。。 at 2016-03-07 03:45
タイトル : わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。..
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その12。。。 わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。ドラマ。。。 このドラマにて子役である鈴木梨央が第8話で再登場する場面があるが、恭子がいくら問うても答えを得られなかった「名前」。 実のところ、名づけの重要性こそが、「アイデンティティ・交換不可能性」の最初の一番重要なポイントであろう。 第6話での真実(まなみ)の最後の言葉、要約すると「提供のためだけに、家畜同様に作られたのなら、いっそのこと、考えな...... more
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「ともし火に我もむかはず燈(ともしび)もわれにむかはず己がまにまに」(光厳院) --- 厳然とした境界を越え得ぬとき、その上でなお、越えうるものがあるとすれば、それは「情」である。

by kisugi_jinen
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