小澤の不等式とスピン-その2-標準偏差:σは無限大にならずに済むのか?。。。
小澤の不等式とスピン。。。
にて長々と訂正を重ねながら書いてしまったが、私が最も興味を抱いているのが、 実験系にて「誤差」と「擾乱」のトレードオフの具体的な関係が明らかになったときの、小澤の不等式での「標準偏差:σ」(記事では「ゆらぎ」)についてである。 この部分はロバートソンの不確定性関係とも関連するが、はたして標準偏差:σは、「誤差・擾乱」の変動関係によらずに一定の値を保ちうるのか? 小澤氏によれば、誤差と擾乱の両方をゼロに近づけることが可能とのことであるが、残念なことに(※1)今回の実験系では、片方をゼロに近づけることができたようだが、その場合に他方は取りうる最大の値:√2(すなわち、スピンの状態としては、+1と-1の両極端の重ね合わせ状態)を取ったようで、真の意味での量子力学的な限界(ロバートソンの不確定性関係)は決して破ることができないことを実証したともいえる。 (※1:私にとってはσが無限大になるといった事態が避けられたので「幸いなことに」である) 問題は、標準偏差:σが誤差・擾乱の関係によらずに、一定の値を取りうるのか?ということである。 もっというなら、 標準偏差:σは測定の影響を受けるのか・受けないのか?ということになる。 個人的には「受けない」のではないのか?と考えている。 いや、正確には、もし仮に小澤の不等式が成立するとしても「受けないでもいいような値が許されている」のでは?と思うのである。 理由はたいしたことではない。小澤の不等式が成立する場合、小澤氏が指摘しているように「誤差・擾乱」をゼロに近づけることが可能な場合には、「標準偏差:σ」が無限大になる(無限大へと操作される)というのが、どう考えても気持ち悪いということにしか過ぎないのである。 そもそも、標準偏差という概念と計測結果という概念の関係からすれば、計測結果のばらつきは標準偏差(ないし分散)と一致しなければならないはずである。それなのに、計測結果の誤差と擾乱がゼロへ収束する場合に、その「散らばり方」であるところの標準偏差:σが無限大へと発散する(させられる)のは、おかしいのではないのか?ということである。 さて、論文は有料とのことで、手に入れていないが、幸いなことに日経サイエンスが明瞭な結果の図を引用してくださっている。 図から読み取れる値をもとに、仕事の合間に計算をしているところである。 現時点で分かったことは、誤差・擾乱が直線的に変化した場合でも、少しばかり複雑な式になるということである。 式は職場に置いてきてしまったので手元にないが、記憶しているところを係数をA,B,Cで表すなら A(σ2-σ1-√2)2 ≧ Bσ1+C といったような不等式が条件としてでてくるということである。(←後日差し替え予定) ※以下、2012/1/27 00:10追加 計算式を持ち帰った。±が少し違っていた。上記の曖昧だった式は判別式Dに相当している。 誤差と擾乱の変化は直線関係ではなく、やや上に凸の形状で変化しているので、式の通りにならないであろうが、おおよその関係を把握することはできると思っている。 念のために繰り返し断っておくが、以下は角度パラメータをxとしたときの誤差と擾乱が直線的に変化した場合を想定した式になっている。 実験結果の該当図は若干上に凸のプロットになっているため、できれば後日、プロットから読み取った値にて近似式をだし、仮想的な直線の代わりに代入してみる予定である。 今回、直線として想定した誤差と擾乱 誤差:(2√2/π)・x --- [1] 擾乱:(2√2/π)・(π/2-x) --- [2] とすると パラメータ:xが0からπ/2までの範囲で成立すべき小澤の不等式:yは、 y(x)=-8/π2・x2 + (2√2/π)・(σ2-σ1+√2)・x + √2・σ1-h/(4π)≧0 --- [3] 上に凸の二次関数なので、x=0およびx=π/2の2点にてy≧0が成立すればいい。 したがって、 y(0)=√2・σ1-h/(4π)≧0 --- [4] y(π/2)=√2・σ2-h/(4π)≧0 --- [5] 念のためy(x)の判別式をDとすると D×π2/2=(σ2-σ1+√2)2 +4√2× σ1-h/π≧0 であり、[4]が成立する範囲でD≧0となる。 [4]は σ1≧h/(4√2・π) であり、成立しない範囲は下記のプロットではほぼ原点付近でプランク定数程度であるため、倍率を1034ぐらいにしないと、見ることも、表現することもできない。(←表現を変えました。2012/1/28 01:10) ということで参考にならないかもしれないが、横軸にσ1縦軸にσ2を、それぞれ(0,√2)の範囲にて設定した時のD×π2/2のプロットを示す。 少なくとも、今回の実験系で誤差と擾乱が直線的に変化したとするならば、σは無限大にならなくとも、(それぞれ誤差と擾乱の最大値以下の範囲で)ある一定の値(式[4],[5]を成立させる範囲)を保っていれば、小澤の不等式を成立させうることが分かった。 繰り返すが、誤差と擾乱の実際の値は直線よりも上に凸であるが、おおよその予測として、それほど外れていないと思っている。 ※2012/01/27 05:30 追記 。。。というより、「誤差・擾乱の変動に影響されずに、一定の値でありつづけている」ことを否定されなかったというべきだろうか?。。。
by kisugi_jinen
| 2012-01-26 02:37
| 思考。。。
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from 来生自然の。。。
at 2012-02-07 05:06
タイトル : 小澤の不等式における「誤差=0」の意味するところ。。。
前回、前々回と、小澤の不等式について、長谷川氏の中性子スピンの計測実験に関する記事を基に少しばかり投稿したが、本質的な問題の意味するところに気が付いたので、別に投稿することとした。 前々回:小澤の不等式とスピン。。。 http://jinen.exblog.jp/17654143/ 前回:小澤の不等式とスピン-その2-標準偏差:σは無限大にならずに済むのか?。。。 http://jinen.exblog.jp/17684183/ 問題点と今までのまとめ 【1】.標準偏差の無限大への発散 ...... more
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from 来生自然の。。。
at 2012-02-15 02:32
タイトル : 小澤の不等式。。。長谷川氏の実験結果の意味するところ。。。
仕事の片手間に考えてるので、断続的にしか進まないが、日経サイエンスでも引用されている長谷川氏の実験結果の図には、深い意味が隠されていることに気が付いた。 図にプロットされた誤差と擾乱のカーブが上に凸の形状を成していることである。 これは、一連のブログ投稿の最初に書いたことでもあるが、非常に重要な事実である。 下に凸、いや、双曲線であったなら、ハイゼンベルグの不等式を否定できないという事態に陥る危険性すらはらんでいるが、それだけではない。 「双曲線でない」ということは、「小澤の不等式...... more
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from 来生自然の。。。
at 2012-03-20 05:09
タイトル : 小澤の不等式が成立しえない場合。。。日経サイエンスの記事..
日経サイエンス4月号を2週間前だったか、入手した。 しばらく仕事が忙しくて鞄に放り込んだまま、ほとんど読むことがなく過ごしていたが、少しばかり時間を作ることができたので、懸案の標準偏差:σの扱いについて考えてみることにした。 長谷川氏の実験結果に関する図が掲載されていたが、小澤の不等式において標準偏差:σ(紙面では「ゆらぎ」)がどのように扱われているかに関する記述がなく、非常に残念だった。日経サイエンスに「金返せ!!」と叫びたくなる(笑)。 唯一、長谷川氏の実験結果にて、(σを含めた)小...... more
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from 来生自然の。。。
at 2012-04-22 06:22
タイトル : 長谷川氏の中性子実験の論文。。。小澤の不等式。。。
小澤の不等式関連のリンクは谷村氏のサイトにまとめられている。 http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/uncertainty/Heisenberg-Ozawa.html そこでも有料版へのリンクしかなかったのだが、 小澤氏ご本人のサイト http://www.math.cm.is.nagoya-u.ac.jp/~ozawa/ からの「分野別主要論文」へのリンク http://www.math.cm.is.nagoya-u.ac.jp/~...... more
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