養老氏の唯脳論と、知の情に対する優位性という幻想的な知的切断面と。。。
養老氏の唯脳論、とくに「カミとヒトの解剖学」には、「隠す」という行為と「脳」との関係が記述されている。すなわち、「脳は統制しようとするがゆえ、脳化した社会は脳の統制力から外れる自然現象を排除ないし隠そうとする」と。。。
同書で養老氏は、視覚の聴覚に対する優位性と脳との関係にも触れている。 視覚と新皮質との連携の強さと、辺縁系との連携の弱さ(進化の過程で弱くなる方向へ向かった)から説明可能だとしている。すなわち、身体側(人間の脳に対する自然側)を隠そうとする方向性は、視覚優位の人間にとっては、脳の構造から説明可能だということである。 一方、聴覚系は新皮質・辺縁系に広く分布するがゆえ、脳側と身体側とを結びつける作用を持っているということである。(注1) これら脳の構造と機能との関係からの説明は、非常にわかりやすく、理解しやすい。 しかしながら、なぜに、新皮質は身体側(自然側)を排除し、隠そうとするのであろうか? 冒頭に書いたように、養老氏は「脳の統合しようとする作用」がそういった現象を引き起こすとしている。(注2) では、いったい、脳は何を統合しようとし、何が切り離そうとして矛盾に陥っているのであろうか? 統合しようとする対象は、新皮質と旧皮質・辺縁系およびそこから連続する身体と身体から連続する外部(養老氏の言うところの自然側)という全体になる。 切り離そうとしているのは「脳」であるとしている。しかしながら、その中心は脳は脳でも「新皮質側」(養老氏の言うところの意識の側、私の言うところの知側)であることは、間違いがない。 すなわち、「知の情に対する優位性」という「幻想的に共有可能な」知的切断面(養老氏の言うところの「社会の脳化」に相当)が、意識の統制を受けない身体側(養老氏の言うところの内なる自然)を、「恥ずかしいもの・隠したいもの」として排除しようとする方向性を有しているということである。 すでに隠されて安心しきっているところについては、葵様の指摘のように、「いかに徹底的に攻めうるか」という作戦が敢行されるであろうし、通常隠さずに済むところについては、「いかに守りに徹するか」という作戦が敢行されるであろう。 と、久しぶりに「カミとヒトの解剖学」に目を通した。 注1:聴覚と脳との関係と、情が辺縁系・旧皮質のみに偏在する機能だけではなく、新皮質にも情を担う部分があることとは、関係があるだろう。それ故に、養老氏の新皮質という解剖学的な構造に境界設定を行なおうとすることと、私の「知・情」という概念に知的切断面を設定しようとすることとの間には、若干のずれが生じてしまう。 注2:この、「統合しようとする」作用の源(意思)について、「カミとヒトの解剖学」では触れていない。この作用の源(意思)こそが、「この」私を私たらしめている作用の一つに相当するであろう。しかしながら、その作用の源(意思)が「ある」ということと「ない」ということの、どちらからも「統合しようとする」作用の説明は可能だといっていい。「ある・ない」は唯心論と唯物論に相当しているが、このことに関連する事項については、過去に記述しているので、深くは触れない。 しかしながら、「この」私を私たらしめている作用の別の要素こそが、切り離し出来ない脳(新皮質・旧皮質)・身体・外部(の自然)という総体であろうことは、明らかであろう。 ※補足: としましたが、多くは「にこごり」という言葉を含んだタイトル内部に記述しています。
by kisugi_jinen
| 2005-09-08 06:35
| 思考。。。
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