わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その22。。。
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その21。。。
最終話。。。 まずは期待を良い方向に裏切った内容に感謝。。。 イシグロ氏の原作から逸脱しないようにしつつ、ギリギリの攻防・葛藤の結果が結実したと言える。 しかしながら、懸念される多くの余波は、物語の構成限界故に、「外部へ」と向けられる。 クローンと外部という強引な二分法は、踏み込んだ内容を描こうとすればする程、境界線上の人々を二分する方向に向かう。 原作では病院や医療スタッフに関しては踏み込んだ記述は皆無だが、ドラマでは頻繁に行われ、視聴者側が外部であるにもかかわらず、あたかも二分法の諸悪の根源のように、視聴者側から、あからさまに責任をなすりつけられざるを得ない立場として描出される。 物語を効果的に構成するためにクローンの介護人という立場の恭子に辛く当たれば当たる程である。 原作では、クローンは外部から「蜘蛛を見るようにおぞましい」と感じられ、外部である校長とマダムからも強力な排除感覚が告げられる。原作の世界では外部の共通認識として強力な境界線を構成している。それ故に、境界を排除しようとする試みは、外部民衆の心理から消極的になり忘れられようとせざるを得無くなる。 一方、日本での今回のドラマでは、原作同様、法的拘束力には全く触れてないのだが、システム的に医療スタッフと事務員を統制し得る「何か」強い外部からの圧力を想定せざるを得無い状況に仕立て上げられている。また、提供を受ける側も、強制的な提供者としてのクローンの存在を知らない人が多くいるという設定に変えられている。校長の恵美子先生をクローン側へと移動させた事もあり、原作での「感覚」のみによる二分法の基盤そのものが、背後に押しやられ、消されようとしている。 結果残るのは、矢面に立たされてしまう医療スタッフと事務員である。背後にある強制的な「何か」は結局明らかにされないが、ヒントは「信実(まなみ)」のサイドストーリーに隠されていると考えるべきだろう。憲法はそのままでも、警官や刑事、機動隊という司法も動き得る「何か」だからである。 原作では宗教的な魂の概念を想定すれば理解可能だったのだが、現代に近い日本という設定でのドラマの版では、「何か」は法的拘束力以外、考えられない。「金銭」「権力」単独も候補に上がるが、あれだけのシステムを、全国レベルにて構成するには限度がある。 で、そんな法律を、憲法や基本的人権に逆らってまで成立せしめるだけの条件・状況。 でもクローンという概念や存在を知らない間に、無知と誤解と偏見が民衆を支配している間に、「金銭」「権力」を駆使し、病院経営者と政治家が結託すれば、何とか成立せしめることができる様にも思えてくる。 「やはりそこか!」となるのだが、これって何かに似てる。そう、思い出した。。。 「お主も悪よのう。。。」 時代劇の勧善懲悪という二分法の世界観そのもの。。。 時を超えて、近未来的に生まれ変わった時代劇そのもの。。。 遠山の金さんはいないけれど、力を無くした御隠居、校長と、助さん、格さんとしての、元教員達。 信実に気づき始めた大衆代表の被提供者達。 日本の心情に落とし込むためには、そこしか無かったのかもしれない。。。
by kisugi_jinen
| 2016-03-19 04:44
| つれづれ。。。
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from 来生自然の。。。
at 2016-03-20 08:45
タイトル : わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。..
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その22。。。 実のところ、原作においても非常に重大な問題を孕んでいたのだが、ドラマ最終話で明らかになった転機がある。実は、第9話にてすでに伏線が敷かれていた。 恵美子先生が病院にて、主治医と思える医者から、「提供を希望されますか?」と聞かれるシーンがある。最初、恵美子先生がクローンとしての提供者として、「任意性に基づき、提供をされますか?」と聞かれたのか?と、思ったのだが、そうではない事に直後に気づいた。恵美子先生の拒否は「ク...... more
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