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わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その18。。。
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その17。。。

原作、イギリスでは森。。。
ドラマ、日本では海。。。

生命の源として、キリスト教系では「生命の樹」を想定するらしい。日本では「母なる海」だろう。

イシグロ氏の原作では「魂が無い」として墓すら存在しない亡くなった同胞・クローンを身近に感じる場として、最後の場面近くで、森が描かれ、通り過ぎつつ吹き溜まる風が描かれている。

ドラマ最終話では、予告編を見る限りにおいて、川の流れと、そこから繋がる海が想定される。
そうして、そこは、両者ともに、あらゆる紛失物(見方によってはゴミ)が届く場所でもある。

母なる海。。。 細胞が細胞膜という境界を介して分離する元となった所。。。

「外部の人間」は、クローンの臓器を利用しなければ生きていけない生命体として描かれている。ドラマの冒頭にて語られた、塀の向こうの森に棲まう、皮だけ残して食べてしまう「化け物」でもある。いや、まさに人狼や吸血鬼を髣髴とさせる。。。

「クローンに魂がない」と言い張ることで強固な境界線を引こうとする「外部の人間」は、真の意味で「魂を悪魔に売りとばした生命体」そのものである。
境界(教会)の内部と外部。。。「魂が有る・無い」は、その境界にて反転しうる。。。

悪魔に魂を売ったという自覚のない人類は、もはや生命の源、すなわち海にすら帰り着くことができずに、クローンの血肉を漁る。。。

それこそ、母なる海からも見放された人類を描いた物語ではないのだろうか。。。

。。。

そう、もう一つの「母なる海からも見放された人類を描いた物語」を知っている。

風の谷のナウシカ。。。

西洋的思想と東洋的思想を癒合させているゆえか、森を腐海と表現しつつ、強酸の海には生命の痕跡すら描かれていない。。。

イデオロギーが中心となった冷戦時代を意識して描かれたナウシカは設定された境界を壊す方向性に生きていた。

科学・ITが急速に境界を壊したために壁は壊され、グローバル化への方向へと舵を切らざるを得なかった現代、逆説的に世界規模で目に見えない境界が乱立されている。ひとたび境界が発生すると、その境界を挟んで人々は戦いの準備に明け暮れ始める。。。

無人偵察機、ロボット、スターウォーズで大量投入されたクローン兵士の幻影すら、見え隠れする。
映画「アバター」では、象徴的に「生命の樹」が描かれ、科学・技術によって倒されてしまう。

人類は、生命の樹を、母なる海を、忘れてはならない。。。

どのように生まれ、どのように育とうとも、生命として生きている限り、宗教という境界も、人種という境界も、民族という境界も、国境という境界も、全てを越えて繋がりあっているということを、忘れてはならない。感じ取らねばならない。。。まずは「情」が先にあるということ。。。

書かれたこと、聞いたこと、見知ったこと、教えられたこと。。。

それら「知的なもの」は、自らの目で、自らの体で経験しない限り、全て「伝聞情報」であることを前提としなければならない。

情が先にあり、知が後付的に理由づけする。
クローンという技術を生み出した近代科学もまた、まさにそこから始まっている。

イシグロ氏は、無垢なる少年少女の成長という過程を描くことで、その序文への入口を描いたともいえる。


「生命の樹」に関する参考資料
http://repo.kyoto-wu.ac.jp/dspace/handle/11173/840
タイトル: D.H.ロレンスと樹木崇拝 : 「生命の樹」をもとめて
その他のタイトル: . H. Lawrence and Tree Worship : Toward "the tree of life"
著者: 中田, 智子 Nakada, Tomoko
発行日: 2005年3月31日
出版者: 京都女子大学URI: http://hdl.handle.net/11173/840
出現コレクション:第04号(2005-03-31)
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by kisugi_jinen | 2016-03-13 00:07 | つれづれ。。。 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 来生自然の。。。 at 2016-03-13 13:19
タイトル : わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。..
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その18。。。 違和感。。。と不安感。。。 私が感じ取っているのは、そういった類のもの。。。 多くのレベルで、積み上げられた大小不同の歪なブロックが危なげに揺らいでいる。そういった違和感。。。 それでも、全体を繋ぎ止めているのは、ドラマとして成立させようという一途な思いと、基底を流れている、人類共有の不安感なのではないだろうか? 複数回の投稿途中から、一神教的な背景について多くを書いたが、実の所、視点をどこに持...... more
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「ともし火に我もむかはず燈(ともしび)もわれにむかはず己がまにまに」(光厳院) --- 厳然とした境界を越え得ぬとき、その上でなお、越えうるものがあるとすれば、それは「情」である。
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