わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その3。。。
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その2。。。
このドラマを見ていると、なぜだかバウムクーヘンを思い描いてしまう。 食べたくなるというのではなく、その層構造を思い描いてしまうということである。 ドラマが扱っているクローン人間を「外部」から分かつモノ。 一言で言い表すのなら、「交換可能性と不可能性」という言葉になる。 彼らがアイデンティティ、すなわち独立した魂を持つ、「何人とも交換不可能な個人」という概念は、ドラマの設定上、「外部」からは全否定されていると見るべきである。 ドラマの進行が、「内部」の一人の女性の視点から為されているので、物語を見る観客の視点が「内部」の思考に同化され、「外部」との接触がない限り、何の違和感も抱きようがないのだが、観客は本来なら「外部」の人間だということを、常に意識すべきである。観客であり続けるためには、彼らが「外部」のために生殖能力を剥奪され人工的に増やされた部品調達のためだけのクローンだという設定を否定することはできない。 ここに、「内部」と「外部」を分かつ、一つの層が織り込まれている。 同一中心から少し距離の離れた層にて、宝箱の中の品々がある。それぞれにとって非常に重要な「思い」が込められた「交換不可能な」宝箱。しかしながら、思いを共有できない他人から見れば、CDも「交換可能な」単なるガラクタ。思いを軸としたもう一つの「交換可能性・不可能性」が織り込まれている。 中心となる3人と周囲の人々との間にも、「交換可能性・不可能性」が織り込まれている。相互に交換不可能な相手のはずなのだが、一人の女性によって翻弄され、主人公の女性は交換可能な男性を選択するという行為を犯し、自身のルーツを交換可能なところに求めてしまう。しかしながら、交換不可能な思いに気づくとき、3人を取り巻く世界が動き始める。 同様の「交換不可能な思い」を「外部」に向けようとする他の施設のグループもあるが、「交換可能な部品」としか見做していない「外部」には、物語の設定上、思いを届けることができないであろう。 無論、「外部」と「内部」を橋渡ししようとする支援団体も描かれているが、「所詮、部品としてのクローン」という物語の根底を覆すことはできないだろう。 物語は、その設定からして、おそらく消化不良の状態で終わらざるを得ない。 しかしながら、これら層を貫きうるものこそが、物語の核心ともいえるのではないのだろうか? それは、まさに「外部」でありながら「内部」から同時に見ることのできる観客の視線でしかありえないのだろう。 物語が終わった段階から、観客一人ひとりが、よく似た問題に対して貫き通そうとする思いを抱き続けることこそが、それぞれの物語の続編になるのだろう。。。
by kisugi_jinen
| 2016-02-19 00:41
| つれづれ。。。
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from 来生自然の。。。
at 2016-02-20 00:32
タイトル : わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。..
わたしを離さないで。。。Never Let Me Go。。。その3。。。 。。。海。。。 この物語・ドラマには、海が象徴的に描かれている。。。 海。。。 それは、「母なる」という意味での「海」である。 生命が海から誕生した時、細胞が自身を母なる海から分かつ時、細胞膜という境界を身にまとった。 母なる海とは「交換不可能な内部」・「唯一無二の自己」を生きるという選択肢を選んだ時、生命は生まれた。 「外」と「内」を分かつ膜が破られるとき、個は母なる海に返る。。。 クロー...... more
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